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今後の不動産仲介を予想

不動産投資家JOJO氏寄稿記事トップ画像

「仲介手数料0.5ヶ月分」が与える不動産オーナーへの影響と対策
~今後求められるのは魅力的な物件づくり~

今回、ブログ・SNSで情報発信されている不動産投資家の「JOJO」氏にご寄稿いただきました。

テーマは『「仲介手数料は原則0.5ヶ月」のニュースが与える不動産業界・オーナーへの影響』です。

“賃貸入居時の仲介手数料は家賃の1ヶ月分”という暗黙の了解を覆すこのニュースは世間を大きく騒がせました。

これを受けて

  • そもそも「仲介手数料1ヶ月分」を集めていたカラクリは?
  • 今後不動産会社はどう対応する?
  • 大家さんはどうすれば生き残れる?

などについてJOJO氏にご解説いただきました。

変わりゆく不動産業界をどう生き抜くべきなのか…。

賃貸物件オーナーや今後物件を手に入れたい人は必読の内容です。

【寄稿者プロフィール】

じょじょ
JOJO
不動産投資家

東京23区でアパートを買い進め、現在4棟32部屋の大家をしている。
大家としての経験を元に初心者向けの不動産投資ブログを運営。
中小企業診断士として不動産会社の経営コンサルティングも行っている。

ブログ:https://asoburo.info/
Twitter:@jojo_felicity

仲介手数料1ヶ月分は払いすぎ?

2019年8月「仲介手数料1ヶ月分は無効」のニュースが報じられる

都内の60代の男性が、事前の承諾なしに賃貸仲介会社から仲介手数料1ヶ月分を支払わされたとして賃貸仲介大手の東急リバブルを提訴しました。

その結果、東京地裁は家賃の0.5カ月分を超える仲介手数料は無効と認め、約12万円を返還するよう命じました。
(参考:『賃貸住宅の仲介手数料は原則0.5カ月分 手数料の一部返還認める 東京地裁』2019年8月8日 毎日新聞

このニュースは不動産業界で波紋を広げています。

というのも、ほとんどの不動産会社は賃貸の仲介手数料として家賃の1ヶ月分を借り主から受け取っているからです。

ではなぜ東急リバブルが請求した仲介手数料1ヶ月分は無効だと裁判所に判断されたのか、考えてみたいと思います。

法律上、借り主から受け取る仲介手数料は原則0.5ヶ月分

不動産会社が受け取ることのできる仲介手数料は宅地建物取引業法によって次のように定められています。

貸借の仲介(媒介または代理)で不動産会社が受け取ることができる報酬額

  • 借り主から受け取れる報酬額:賃料の0.5ヶ月分以内
  • 貸主から受け取れる報酬額:賃料の0.5ヶ月分以内
    それでは、どうして仲介手数料1ヶ月分を請求する不動産会社が存在しているのでしょうか?

借り主から仲介手数料1ヶ月分を受け取る裏技

借り主からは「仲介手数料」、大家からは「広告費」

次のような例外措置が存在しています。

「貸主と借り主から受け取る報酬の合計額が賃料の1ヶ月分以内であれば、それぞれから受ける報酬額に特に制限はない。」

通常、不動産会社は貸主である大家さんと借り主の両方からそれぞれ0.5ヶ月分の仲介手数料を受け取っています。

ただし、上記のように大家さんから受け取る仲介手数料をゼロにすれば借り主から仲介手数料を1ヶ月分受け取ることが可能です。

これだと大家さんだけが得するように見えるかもしれません。

ただし実際には大家さんは入居募集の成功報酬として仲介不動産会社に賃料の1ヶ月分以上の金額を支払うことがほとんどです。

不動産会社は借り主からすでに仲介手数料を1ヶ月分受け取っており、大家さんからは仲介手数料を受け取ることができません。

そのため、不動産会社は大家さんから「広告費」という名目で報酬を受け取っています

仲介手数料の上限は1ヶ月ですが、大家さんから特別に依頼された広告出稿や出張対応に対する費用は実費を請求して良いことになっているからです。

事前説明がないと「仲介手数料1ヶ月分」は無効

不動産会社が借り主から仲介手数料1ヶ月分を受け取ること自体には何ら問題はありません。

ただし、不動産会社は契約する前に借り主から承諾を得ておく必要があります。

そして、今回のケースでは借り主は東急リバブルから事前に何の説明も受けていませんでした

こうして今回の裁判では借り主が支払った仲介手数料1ヶ月分は無効だと判断されました。

今後は「仲介手数料0.5ヶ月分」が浸透する可能性大

この判決が出たことで、今後は不動産会社が借り主からの事前の承諾なしに仲介手数料1ヶ月分を受け取ることは難しくなるでしょう。

本来ならば0.5ヶ月分で良いところをわざわざ1ヶ月分の仲介手数料を支払う借り主はいませんからね。

実質的には今後は不動産会社が借り主から受け取れる仲介手数料は0.5ヶ月分が当たり前になると思われます。

今後の不動産会社の対応

仲介手数料が0.5ヶ月分しか取れなくなることによって、不動産会社は次の対応を取ると予想できます。

  1. 低家賃の物件の内見は断るようになる
  2. 借り主からの仲介手数料が減額された分、大家さんに請求する広告費用を増額する

低家賃の物件の内見を断るようになる

不動産会社からすると仲介手数料の売上が半分になることになります。

売上が減っても利益を出すためには仲介業務を効率化するしかありません。

多くの不動産会社はより多くの手数料が稼げる高家賃の物件の仲介に力を入れるようになると思われます。

その結果、儲からない低家賃の物件の優先順位は大きく下がるでしょう。

例えば

  • 家賃10万円の新築マンション…仲介手数料5万円
  • 家賃3万円のボロアパート…仲介手数料1.5万円

だとすれば、後者のとき営業担当の人件費すらペイできません。

セルフ内見が増加

そのため低家賃の物件については内見の際に営業担当が付き添うことをやめ、入居希望者に鍵だけ渡して勝手に部屋の中を見てもらうようになるでしょう。

今でも地方の低家賃のワンルームだと、このようなセルフ内見は当たり前になっています。

このセルフ内見が地方のファミリー物件や都会のワンルームにまで広がってくると予想できます。

今後、営業担当が同行して部屋の案内をするのは家賃が高い物件だけになるでしょう。

大家さんに請求される広告費用が増額に

借り主からの仲介手数料が減額される分、不動産会社はどこかで売上を補填するしかありません。

そうなると、不動産会社が大家さんに請求する広告費用を増額してくるのは容易に想像できます。

今は賃貸物件が飽和している時代。

どの大家さんも空室を埋めるために必死です。

そのため僕たち大家さんの立場は弱く、不動産会社からの広告費用増額要求を受け入れざるをえないでしょう。

現在の広告費用の相場は

  • 東京…家賃の1ヶ月分
  • 札幌(賃貸激戦区)…家賃の3ヶ月分

という状況で、これが更に増額されると賃貸経営の大きな痛手となります。

大家さんが取るべき対策は?

低家賃の物件はより魅力を押し出す

今後、低家賃の物件は不動産会社から敬遠されていくことになります。

具体的にいうと家賃が2~3万円しか取れない物件は満足に客付けしてもらえなくなる可能性が高いです。

そのため、低家賃の物件を所有している人は不動産会社の営業に頼らなくても物件の魅力が伝わるように工夫することが大切です。

例えば手作りのポップで以下のように物件の特徴をアピールすることが有効になります。

『エアコンを新品に交換しました。』

『ネット無料です。入居してスグ使えます。』

こうすることで、セルフ内見になったとしても物件の魅了を十分に伝えることができます

高家賃の物件に資産組み換え

もう一つの対策は、低家賃の物件から脱却し高家賃の物件に資産を組み替えていくことです。

地方のワンルームの場合

  • 高い家賃が取れる都心のワンルームに資産入れ替え
  • 比較的高い家賃が取れる戸建賃貸にシフト

などの対策が有効です。

今後日本は人口が減少し、空き家はますます増えていきます。

そのため、狭い上に立地が良くない単身者用物件は入居付けが一層難しくなります

これを機会に、高家賃=資産価値の高い物件に所有物件を組み替えていくのが良いのではないでしょうか。

今後求められるのは魅力的な物件作り

いずれにせよ、今回の判決は不動産会社だけでなく僕たち大家さんにとっても厳しい判決となります。

入居者並びに不動産会社からも選んでもらえる魅力的な物件を作り込むことが、大家にとって最大の対策になると言えるでしょう。

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-不動産コラム・取材