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郊外物件との向き合い方

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郊外物件で見るべきポイント
~実際の物件を使って解説~

今回、不動産と証券投資について発信するブロガー「りーまん」氏にご寄稿いただきました。

りーまん氏の所有する4件の物件はすべて埼玉県の郊外にあります。

郊外物件を中心に不動産投資を行うりーまん氏に

  • 郊外物件のメリット・デメリット
  • 戸建とアパートの比較
  • おすすめの郊外エリア

についてご解説いただきました。

郊外物件の購入を検討されている不動産初心者の方は、ぜひご一読ください。

【寄稿者プロフィール】

りーまん
投資ブロガー

都内不動産管理会社勤務。
業務上得た知識や経験を生かせるとして、大家業を2018年開始。
現在、戸建1棟アパート3棟保有。
収益物件購入の経緯や判断基準、 日本株や米国株投資など多岐にわたる投資実践録をブログにて発信中。

Twitter:@Lehman1980
投資Blog:https://saitama.website/
米国株寄稿:https://www.gogojungle.co.jp/finance/navi/series/1062

大家としてのこれまで

土地勘のあるエリアの物件を購入

私は、2018年冬の築古戸建(埼玉県狭山市・築39年)購入を皮切りに大家業を始めました。

以来、埼玉県南部郊外エリアの築古物件を中心に購入し

  • 戸建…1棟
  • アパート…3棟14戸

を保有するに至りました。
※2020年1月現在。

現在は兼業大家なのでなかなか物件を見に行けません。

それでも戸建は自主管理で、それ以外はそれぞれ異なる管理会社や共用部分清掃会社に依頼中です。

とはいえ、2か月に1回以上は全物件を自分の目で見るようにしています。 

埼玉県南部の自宅から、車で概ね1時間以内でどの物件にも到着可能です。

なお、埼玉県には14歳の時に父の転勤でさいたま市に引っ越してから約20年間は住んでいます
(20代後半に5年ほど23区内に住んでいました。) 

そのため、購入しているのは土地勘があるエリアの物件です

不動産業界の業務経験を大家業に反映

大家業は、20代後半くらいから漠然と将来挑戦してみたいと考えていました。

実際には、2017年から主に

  • 大家さんのコラム・ブログ等で大家業の考え方を身につける
  • 土地勘があるエリアでの新着物件を実際に見に行って見る目を養う
  • 各物件の地元不動産会社を訪問し賃貸市況について尋ねる

などして、知識を蓄えていきました。 

ちなみにプロフィールにもある通り大家としては新米ですが、不動産業界には新卒以来18年ほど本業として従事しています。

大卒後、都内マンションを対象とした不動産売買仲介会社にて約7年勤務。

29歳の時に不動産管理会社に転職し、以後建物内外の維持修繕・日常管理等の企画提案を仕事としてきました。 

よって、本業における業務知識も生かしながら大家業に取り組んでいるところです。 

郊外物件の特徴とは

郊外・中心地・地方の物件を比較

ここでは、郊外物件とその他の物件を比較してみたいと思います 

物件の定義としては以下の通りです。 

  • 郊外物件
    →中心地物件の外縁部エリアに立地・ターミナル駅まで電車で1時間圏内
  • 中心地物件
    →23区やさいたま市、横浜市等に立地・ターミナル駅まで電車で30分圏内
  • 地方物件
    →上記2つに該当しないエリアに立地・ここでは関東地方に限定

3つの比較ポイントを表にまとめましたので、ご確認ください。 

表1  価格帯  表面利回り  融資利用 
郊外物件  1000万円前後から  8~12%  可能 
中心地物件  4000万円前後から  5~7%  可能 
地方物件  数百万円から  15%以上  やや難しい 

郊外物件のメリット 

郊外物件は、比較的低価格ながら中心地物件と比べて高い利回りを得ることができます

首都圏近郊なら複数の地域金融機関(地方銀行、信用金庫等)があるので、木造築古物件でも融資が受けられる可能性が高いです。

金融機関を競合させて

  • 低金利
  • 長期返済期間
  • 低自己資金

などのより良い条件での融資を引き出せるケースも 

なお、収益物件への融資には各金融機関ごとに対象エリアや融資者の住所地に制限があります。

そういう意味では、居住コストの低い郊外に住むことは地元の金融機関に融資相談を持ちかけやすく賃貸経営上のメリットになるとも言えるでしょう。 

郊外物件においては、運営上も次のようなメリットがあげられます。 

運営上のメリット

  • ターミナル駅にも乗り換えなしで出られるため比較的賃貸需要がある
  • 賃貸需要があるベッドタウンは賃料相場が下がりにくい(特に築古物件) 
  • 管理会社やリフォーム会社の選択肢が複数ありコスト削減可能
  • オーナーチェンジ・土地としての実需への売却のどちらも可能 

郊外物件のデメリット 

郊外物件のデメリットは以下の通りです。

  • 地価の上昇が望みにくくキャピタルゲインや転売差益を得にくい
    →むしろ10年後15年後の土地下落リスクが考えられる
  • 中心地物件と比べ賃貸需要が弱いため空室リスクが比較的高い
  • 土地が比較的安価であり相続税対策などによる新築アパートが供給されるリスクが高い

主に、中心地物件との比較になってくると思います。

空室や他物件との競合というリスクは、差別化を図ることでいくらかリスクヘッジできるでしょう
賃料、敷金等初期費用の値下げ、高速インターネットの無料化等)

新規参入する大家への融資は厳しい

収益物件を購入するにあたって、融資利用できるか否かは非常に大きなファクターです。

しかし2018年以降スルガ銀行の不正融資問題以降、金融機関に対する金融庁の指導が強化。
(参考:『スルガ銀行不正融資問題』コトバンク 2018年

大家業への新規参入希望者に対する融資が厳しくなっています。

融資引き締めの具体例

  • 融資対象者の年収ライン上昇 
  • 融資対象者の保有純資産ライン上昇(通帳原本確認等の実施) 
  • 提供自己資金の上昇(自己資金小⇒諸費用&自己資金2割) 
  • 融資対象物件の担保評価厳格化 
  • 建物の減価償却耐用年数超過に対する融資年数短縮 

従来は収益還元法を重視した金融機関もあり、一定以上の賃料収入があるRC造マンション(1億円以上)であればオーバーローン(物件価格100%&諸費用分まで融資)が利用できました。

しかし、今は大家業の経験年数がある程度ないとオーバーローンの実行は難しいでしょう。 

実際に購入した郊外物件

ここから私が実際に購入した郊外物件について解説していきます。

①初めて購入した木造戸建

冒頭に触れた、最初に購入した戸建は以下の通りです。 

【物件①】郊外のサテライト都市の戸建(埼玉・西武新宿線入曽駅徒歩7分)
構造・築年数:木造・築40年
物件価格:550万円
リノベ費:300万円
利回り:14.1%(リノベ費込み)
稼働率:90%想定
融資:現金購入
土地/建物比率:60%:40%(リノベ費込み)

昭和50年代築でも外壁等の状態が良い和風注文住宅を購入し、リノベーションしたケースです。

DK以外が和室の4DKでしたので、1階の部屋を全てつなげて間仕切り変更し大型2LDKとしました。

郊外で駐車場がない物件でしたので競争力は低かったものの、募集3か月で戸建賃貸希望者が借りて下さいました 

②融資を使って購入した木造アパート

また、初めて融資を利用して購入したアパートは以下の通りです。 

【物件②】郊外の主要都市のアパート(埼玉・東武東上線志木駅徒歩13分)
構造・築年数:木造・築33年
物件価格:4,000万円
利回り:9.6%
稼働率:94%想定
融資:金利1.5%、期間25年、自己資金2割
土地/建物比率:85%:15%

昭和60年代築とやや古く、外壁修繕工事がそろそろ必要な状態でした。

しかし、東武東上線の急行停車駅で人気の志木駅が徒歩圏ということで2019年夏購入。

東京地盤の地方銀行が非常に低利かつ長期に融資していただけることになり、安定的に運営できると判断しました。

2020年2月から、外壁修繕工事を実施予定です。 

戸建とアパートの比較 

では戸建とアパートではどのような違いがあるのか見てみましょう。

〇建物構造・築年数 
築古物件をできる限り延命して運用し、出口は住宅用地としての売却を基本戦略としています。
木造物件は税法上の耐用年数が短いため長期融資を受けにくいもの。
しかし、修繕費用や解体費用は、RC造と比べ安価です。 

〇利回り 
目安の表面利回りは10%で投下している自己資本もほぼ同額。
しかし実際の手残りは戸建よりアパートのほうが倍近いです。
高価格で自己資金比率が下がるほどその傾向にありますから、自己資金の回収期間は短くなります。
上記①では8年程度で回収。
②ではローン元本返済分含めれば3年、含めなくとも5年程度で自己資本回収が可能です。
 

〇稼働率 
戸建は0か100、アパートは戸数で分割されます。
そのため、戸建のほうが稼働率の面でリスクは高いです。
ただし入居すれば他の代替物件がないことが多いので、退去リスクはアパートより低いと考えています。
 

〇土地建物比率
どちらもできる限り土地値(取引価格)で買えるように価格交渉の末、納得できた価格で購入しています。
しかし売主様側のご事情もあるため、土地値まではなかなか下がりません。
また、リノベーション工事を行ったため戸建のほうが建物比率が高くなります
 

手残りは戸数で勝るアパートがどうしても高いですが、退去リスクの少なさは戸建に軍配が上がります。

郊外物件おすすめエリア

東京・神奈川・埼玉でおすすめの沿線

ここ2年ほどで収益物件の価格が下落し、利回りは上昇傾向にあります。

郊外の中でも

  • 好立地(高路線価)
  • 土地値程度で購入できる高入居率物件

などを見つければ、融資利用の道も開けるでしょう 

私が知る限り、東京郊外でおすすめなのは次の路線です。

【東京郊外おすすめエリア】

  • 神奈川県
    →京急本線、小田急線、JR横浜線、JR南武線
  • 埼玉県
    →西武各線、東武各線、JR埼京線、JR武蔵野線
  • 東京都
    →京王線、小田急線、西武各線、JR青梅線

郊外物件は初心者におすすめ

郊外物件は、キャッシュフローを得つつ出口戦略まで含めたトータルでの利益獲得の難易度が比較的低いです。

もちろん

  • 物件の目利き難易度
  • 築古物件ならではの運営上のハードル

は決して低くありません

しかし賃貸管理会社などの力を借りれば、大家業初心者でも敬遠する難易度ではないでしょう 

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-不動産コラム・取材